顎関節症は、口を開こうとすると顎関節(耳の穴の前にあります)や顎を動かす筋肉が痛む、あるいは十分に大きく口を開けられない、または口の開け閉めで顎関節に音がするという症状が現れる病気です。一生の間に2人に1人は経験すると言われているほど多くの方が経験する症状で、特に女性に多く、年齢は10歳代後半から増加し、20~30歳代で最大になります。
当院では、「マイナス1歳~100歳まで茗荷谷の小さな大学病院」として、歯を守る専門家チームで患者さんの健康を守ります。お一人おひとりの優先順位に沿った顎関節症治療を提供し、根本的な改善を目指します。
顎関節症とは?

顎関節症は、あごの関節部分や関節を動かす筋肉に問題が生じる病気です。主な症状として、口の開閉時の痛み、開口制限、関節音などがあります。
関節から音がするだけの場合は、肩や首を動かしたときに音がするのと似ており、人口の約2割の方に見られる現象です。音のみの症状であれば基本的に治療は不要とされています。実際に医療機関での治療が必要となるのは、症状のある方のうち約5%程度です。
患者さんの多くは女性で、思春期以降に症状が現れ始め、20代・30代で受診される方が最も多くなっています。年齢を重ねるにつれて受診される方の数は少なくなっていきます。
顎関節症の治療が対象となる方

- 口を大きく開け閉めしたとき痛みがあり、その痛みが1週間以上続いている方
- 口を開けたり閉じたりする際に顎やこめかみに痛みを感じる方
- 口を大きく開けることができない方
- 口を動かすとカクカク、ガリガリといった音が鳴る方
- 食べ物を噛むときに違和感がある方
- 朝起きた時に顎が疲れている感じがする方
- 頭痛や肩こりが頻繁に起こる方
- 歯ぎしりや食いしばりの習慣がある方
- ストレスを感じやすい方
当院の顎関節症治療における特徴

地域最大級の歯科医院だからこそ実現できる専門医療
当院は90坪の地域最大級の歯科医院として、歯科医師、歯科衛生士、保育士などの専門スタッフがチームとなって顎関節症治療にあたります。単に症状を抑えるだけでなく、原因を特定し根本的な改善を目指すため、「歯を守る専門家チーム」で患者さんの健康を守ります。
マイクロスコープによる精密診査

当院では最新のマイクロスコープを導入し、顎関節の状態を詳細に観察できます。従来の目視による診査では発見が困難な微細な変化も捉えることができ、より正確な診断と治療計画の立案に役立ちます。
CT撮影による立体的な診断
必要に応じてCT撮影を行い、顎関節の骨の状態を詳しく確認いたします。従来のレントゲン検査では発見困難な骨の変形や異常も早期に発見でき、より正確な診断と治療計画の立案に役立ちます。
顎関節症の分類について

顎関節症は症状や原因によって4つのタイプに分けられます。
もっとも頻度が高いのは、関節内部にあるクッションの役割をする円板がずれてしまうタイプです。軽度の場合は開閉時に「カクン」といった音が鳴り、重度になると大きく口を開けることが困難になります。口が開きにくくなると、食事や会話の際に痛みを伴うことがあります。これらのタイプで当院を受診される方は全体の約6割を占めます。
その他のタイプとして、関節自体に問題はないものの、あごを動かす筋肉の働きが悪くなって頬や側頭部の筋肉に痛みが生じるタイプ、円板のずれはないものの関節部分に炎症が起きて痛みが生じるタイプがあります。
4つ目のタイプは、長期間症状が続いたり高齢の方に見られることが多く、関節を構成する骨自体に変形が生じるタイプです。
顎関節症の原因について

顎関節症の発症原因は単一ではなく、現在では複数の要因が重なって起こるという「多因子病因説」が広く受け入れられています。関節や筋肉への負担となる様々な要因が複合的に作用し、個人の耐久性を超えたときに症状として現れると考えられています。
発症に関わる要因には、関節や筋肉の構造的な特徴、噛み合わせの状態、精神的な緊張状態の継続、外傷、日常生活における様々な習慣や癖などがあります。
なかでも注目されているのが、必要のないときにも上下の歯を接触させてしまう「歯列接触癖(TCH)」です。通常、唇を閉じていても上下の歯は触れ合っていませんが、当院を受診される顎関節症の患者さんの約8割にこの習慣が見られます。この習慣があることで関節や筋肉に継続的な負荷がかかり、症状の発症や悪化につながりやすくなります。
顎関節症治療で期待できること
日常生活が楽になる

顎関節症の治療により、食事や会話などの基本的な動作が楽になり、日常生活がより快適になります。痛みから解放されることで、ストレスが軽くなり、気持ちも楽になります。
頭痛や肩こりが楽になる

顎関節症は頭痛、肩こり、首の痛みなどの全身症状を引き起こすことがあります。当院での顎関節症治療により、これらの症状も同時に楽になることが期待できます。
将来の問題を防げる
治療により顎関節の機能が正常になると、将来的な顎関節の変形や機能の問題を防げます。早期治療により、より重篤な症状への進行を防げる可能性があります。
当院の顎関節症治療の流れ

しっかりとした問診と検査
初診時には、症状について詳しくお聞きします。いつから症状が始まったか、どのような時に痛みが強くなるか、生活習慣なども詳しくお聞きします。その後、CT撮影や口の中の検査、顎関節を触って確認するなど、顎関節の状態を詳しく調べ、他の病気との見分けを行います。

患者さんに合わせた治療計画
検査結果に基づき、患者さんの症状や生活スタイルに合わせた治療計画を立案します。世界的に推奨されている安全な治療を基本とし、治療方法、期間、費用について詳しく説明し、患者さんが納得された上で治療を開始します。

段階的で安全な治療
まずはスプリント(マウスピース)療法や生活指導から開始します。症状に応じて理学療法も併用し、段階的に治療を進めます。歯を削るなどの元に戻せない治療は避け、安全で効果が期待できる治療を提供いたします。
治療に関する大切な考え方

当院では、世界的に認められている顎関節症治療の基本原則に従って治療を行います。治療方法を選択する際は、その治療による効果がなかったときに、患者さんにその治療による害を残さない治療(可逆的な治療)を選択することが大切です。
具体的には、歯を削る、被せ物をする、歯列矯正をするといった元に戻せない治療は避け、スプリント(マウスピース)療法、開口訓練、マッサージ、習慣や癖を直す行動療法など、安全で効果が期待できる治療法を中心に行います。
顎関節症の治療法

スプリント(マウスピース)を使った治療
最も一般的で効果が期待できる治療法の一つです。患者さんの口の中に合わせて作ったスプリント(マウスピース)を夜間睡眠中に装着することで、無意識の歯ぎしりや食いしばりによる顎関節や筋肉への負担を軽くします。多くの場合、この治療により症状が楽になることが期待できます。
生活指導と行動の改善

日常生活での注意点をお伝えし、顎関節に負担をかけない生活習慣の指導を行います。特に歯列接触癖(TCH)の改善指導に力を入れており、この癖を改善することで大部分の患者さんの症状が楽になることが期待できます。また、姿勢の改善や食事指導も併せて行います。
家庭でできるセルフケア
患者さん自身による家庭でのセルフケアは症状が楽になるためにとても大切です。セルフケアなしで症状の完全改善は困難なため、患者さんと一緒に治療を進めてまいります。
痛みが強い時期のセルフケア
10分間を限度として氷水を入れたビニール袋を痛む部位に当てて冷やし、その後ゆっくりと口を開け閉めする方法を指導します。食事は小さく切り分けて大きく口を開けることを避け、硬い食品は控えていただくよう指導いたします。
症状が落ち着いてからのセルフケア
蒸しタオルを5分ほど当てて温める方法、親指の付け根や指先でゆっくりと押し回すマッサージ方法、口を開ける練習などを詳しく指導いたします。これらの方法により、痛みが楽になるスピードが早まることが期待できます。
治療後の経過観察

顎関節症の治療において大切なのは、症状の完全改善を確認することです。完全に機能が回復した場合は、最大まで口を開いても痛みがない状態になります。音に関しては残る場合もありますが、痛みがなく音だけであれば心配はありません。
痛みが完全になくなってから他の歯科治療を行うことで、より良い結果が期待できます。症状が完全に改善されていない状態での治療は、治療のやり直しにつながる可能性があるため、当院では慎重に経過を観察いたします